Dvorák  Piano Concerto in G minor, Op.33 (2015.10.4)
Sviatoslav Richter/Bavarian State Orchestra/Carlos Kleiber, condunting


かなり昔にLPディスクを購入して、これはなかなかいい曲だと思った演奏であるが、楽譜を買ったのはその後で、楽譜を見ながら聴いたことはなかった。
それを、最近ドヴォジャークのピアノ作品研究を再開するようになって、もう一度聴き直してみたという次第である。

一言で言うと、これはシューマン以降のロマン派ピアノ協奏曲の中で、かなりの名作であると思う。

ただ、演奏者を選ぶことは確かだ。クルツが独奏パートを書き直したものが今でも使われているようだが、リヒテルはオリジナルに忠実に(LPの解説によると「僅かな部分、クルツからのパッセージを借用」しているとのこと)演奏している。この方針には賛成だ。ドヴォジャークが当時のピアニズムを知らなかったわけでは無いと思うから(ピアノ独奏曲を見ればわかる)、リストやブラームス風ではない、自分の音楽語法で「ピアノ協奏曲」を書きたかったのだと思う。そんな作曲者の思いが伝わってくるような演奏だと思った。

リヒテルの演奏はどんな曲でも細部をおろそかにしない演奏でいつも気に入っているのだが、かと言って全部の音が聞こえてくるワイセンベルクのような演奏とも違う。本当に「音楽」を愛し、理解したものだけが出せる音がここにはあると思う。彼の演奏を聴いていると、昨今のパフォーマンス至上主義のような演奏など瞬時に色あせてしまう、と常々思ってきた。こういう「ピアノ付き交響曲」のような作品になるとその姿勢がまさにふさわしく、他の演奏(あまり演奏されていないが)など聴く気はしなくなってしまう。第2楽章など、少ない音の中からこれだけの詩情がどうして出せるのか、とも思ってしまう。

カルロス・クライバーの指揮もなかなか見事である。

ただ、CDで聴くとかつてのLPディスクほど音の良さを感じられないのが残念。最近、またアナログが見直されているというニュースもあるようだし、これからもアナログの音を聴いていきたいと思ったことであった。




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