バラキレフのピアノ作品

ミリイ・アレクセエヴィッチ・バラキレフMily Alekseyevich Balakirev1837-1910)

1837年生まれ。ロシア・ロマン派の作曲家。始祖グリンカの後継者を自任し「ロシア5人組」を結成。ロシア国民楽派を確立するとともに演奏家としても活躍した作曲家。

バラキレフのピアノ作品は、彼自身有能なピアニストだっただけあって、魅力的なものが多く残されています。代表曲「イスラメイ(東洋的幻想曲)」はしばしば管弦楽編曲でも演奏されるが、その鮮やかなピアニズムはラヴェルらの研究対象にもなっていたそうで、その他の作品にも、リストやショパンの流れを受け継ぎながら独自の音楽語法をみせる素晴らしい作品群です。

ピアノ独奏曲

イスラメイ(東洋風幻想曲) ラヴェルが「この曲より難しいピアノ曲を書きたい」と言って「スカルボ」を作ったと言われる。反復音、重音、オクターヴなどロマン派的ピアニズムが最高度にくり広げられるが、中間部の抒情性にはバラキレフの個性がはっきりと表れている。「イスラメイ」はコーカサス山脈北側のカバルディノ地方からアドイゲイ地方に広がるテンポの速い民族舞曲。(この曲の難しさはオクターヴ奏にあり、テンポ設定が重要と思われる。速い所は素晴らしいがオクターヴになるとテンポが遅くなるといった演奏を時々聞くことがあるが・・)
グリンカの主題による幻想曲(Fantasia on themes from Glinka's 'A Life for the Tsar') *
幻想小曲集 ロシア風メロディーと華麗な装飾句の対比が効果的な演奏会用小品
夜想曲第1番 変ロ短調 ショパン風ノクターンと言えるが、伴奏が複雑でメランコリックな色彩が強い。中間部では「イスラメイ」の中間部のような旋律が聞こえる
夜想曲第2番 ロ短調 悲劇的で暗い情緒が全曲を支配。中間部にはショパンのハ短調ノクターンのハ長調部分の雰囲気が。全曲は10分近くかかる。
夜想曲第3番 ニ短調 バルカロール風。
奇想曲 *
ピアノ・ソナタ変ロ短調 Op.5 Andante/ Mazurka/ Andante という見慣れない楽章構成だが、リストを思わせる力強さとロシア的な暗い情緒を持っている。
ソナティネ(スケッチ集) *
ピアノ・ソナタ変ロ短調 Andantino/ Mazurka-moderato/ Intermezzo-larghetto/ Finale-allegro non troppo ma con fuocoという構成で、民謡風の楽想が雄大に展開される第1楽章、リズミカルでシンフォニックな第2楽章、しみじみと語りかけるような第3楽章、ロシア的で力強い第4楽章(終わり方がかなり独特)が、となかなか聴きごたえがある作品。「イスラメイ以後の最重要ピアノ作品」と言われ、チャイコフスキーのあと、ラフマニノフ、スクリャービン、プロコフィエフと現れるロシアのピアノソナタ名作群までに書かれたソナタの中ではもっともすぐれた作品と言える。
ワルツ集 フォーレの「ヴァルス・キャプリス」にも似た世界を感じさせる。ピアニスティックな作品集。
マズルカ集 独特のロシア的情緒のマズルカ。(この中の“第5番ニ長調”はソナタの楽章にも使われている)
スケルツォ集 ショパン、ブラームスへの敬意が感じられる。
小品集:
ドゥムカ/庭園にて/ゴンドラの歌/子守歌/ひばり/スペインのメロディー/糸を紡ぐ女 La fileuse /チロルの踊り/漁夫の歌Chant du pecheur/ユーモレスク/夢/ノヴェレッテ/トッカータ
「ドゥムカ」は深い情緒を持つ名作。
「ひばり」はグリンカのロマンスに基づく編曲。最近では最も多く演奏されるバラキレフの作品かもしれない。
「トッカータ」はロマン派のように急速ではないが和音の連続が技巧的効果を生む。何となく懐かしい旋律で、情緒のある作品。
編曲集
「ホタ・アラゴネスカ」はリストのスペイン狂詩曲を思わせるピアニズムが特徴。
「ショパンの2つの前奏曲による即興曲」は変ホ短調とロ長調の前奏曲を繰り返し用いてひとつの作品に仕上げるというもので、個性的な発想。
他には、多大な影響を受けたグリンカの作品の編曲が多い。

ピアノ協奏曲

ピアノ協奏曲第1番 嬰へ短調 単一楽章の作品。
ピアノ協奏曲第2番 変ホ長調 死後、弟子のリャプノーフにより完成された。


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