タイユフェール Germaine Tailleferre(1892-1983) のピアノ作品

ピアノと管弦楽

曲名 寸評
ピアノと管弦楽のための断章
ピアノと管弦楽のためのバラード ラヴェルの音楽を思わせる美しいピアニズム。
ピアノ協奏曲第1番 ピアノと小編成管弦楽のための作品。アメリカに移ったタイユフェールが自身のピアノで初演した(メンゲルベルク指揮)。快活で華やかな第1楽章 Allegro(ニ長調、4/4拍子)は常に8分音符が連続する運動的な音楽で、どことなくプロコフィエフやオネゲルの協奏曲を思わせる。第2楽章 Adagio(ロ短調、3/4拍子)はメランコリックで美しい楽章。フリギア終止のあと、ニ長調6/8拍子 Allegro non troppo のフィナーレとなる。全体的に新古典主義の香りに満ちた作品と言える。
2台のピアノと合唱およびオーケストラのためのコンチェルティーノ
ピアノとオーケストラのための3つのエチュード
ピアノ協奏曲第2番
2台のピアノと打楽器のためのパルティータ“ラモーを讃えて”

ピアノ独奏曲

即興曲(1912) 流麗なアラベスク風音楽。転調に独特の香りがある。
ロマンス(1912) フォーレを思わせる抒情性。
あまり速くなく Pas trop vite (1914) スクリャービン風の揺れる調性感が特徴と思われる。ハープを思わせるアルペッジョが美しい。ホ長調、6/8拍子。
パストラール ニ長調 (1919) 多調による楽しい表現の1曲。どことなくドビュッシー風でもある。ニ長調、5/8拍子。
ドビュッシーをたたえて (1920) ト長調、ヘ長調のオスティナート伴奏の上に2声による楽想が繰り広げられる。
速く Très vite (1920) これもオスティナート伴奏による作品。「野外の遊び」第2曲に似た旋律も登場する。
パストラール 変イ調 (1928) 美しい変イ長調の旋律で始まるがだんだん不協和音が多くなる。
シシリエンヌ (1928) ミヨーを思わせる和声。
パストラール ハ調 (1929) 冒頭部分はプーランクの「ノヴェレッテ第1曲」と似ている感じもある。転調を繰り返すあたりからはタイユフェールの個性が表れる。
フランスの花々 子供のための8つの小品集 (1930) 平易な技巧で書かれた曲集。「プロヴァンスのジャスミン/ギュイエンヌのひなげし/アンジュの薔薇/ラングドックの向日葵/ルシヨンのカモミール/プロヴァンス高地のラヴェンダー/ベアルンの朝顔/ピカルディの矢車菊」
犬 Chiens (1931) 5/4、6/4、4/4の交代する変拍子。G♯が支配するが調整不安定な部分を経て、ホ長調のミニマルミュージック調の楽想となる。
インカのパストラール Pastorale Inca (1931) 3+3+2構成の8/8拍子、ヘ長調。途中から が4つ並ぶ音型になるがその対比が面白い。
子守歌 (1936) ピアニストのフランソワ・ラングに献呈された作品。作曲年を1935年としてある本もある。
アルザス館にて (1937) パリ万博のための委嘱作品ということである。
ブルターニュ Bretagne (1940) 神秘的な曲調。
傘のフーガ(※訳は未確定) Fugue du parapluie かなり自由に作られたフーガ。
マイクロフォンのための内緒話 Les confidences d'un microphone for Piano, Radio Music (1946) Shapiro, “GERMAINE TAILLFERRE A Bio-Bibliograph” によると全8曲。Fabrik版の楽譜では5曲となっており、一部曲名が違っている点について現在調査中。
2つの小品 (1954) 1.ラルゲット Larghetto ワルツ・レント:嬰ハ短調でやや愁いを帯びた曲調。四分音符=104という指示がある。 2.ゆるやかなワルツ Valse lente:2台ピアノ「2つのワルツ」の独奏版。
チャーリーのワルツ (1954) チャップリンに献呈された作品。
パルティータ (1957) 1. Perpetuum mobile(allegretto)不協和音を繰り返すミニマル音楽風/2.Notturno(Andantino)現代的な夜想曲/3.Allegramente(Allegro) 印象主義的な音を駆使した楽しい音楽。
夢 Réverie(1964) 六人組ルイ・デュレの「雪」を思わせる非常に美しい作品。
ぶらんこ(1975頃) エルヴィール・ルデール(作曲者の孫)に献呈された作品。3連符のゆらぎが柔らかな独特の情感を生んでいる。
森でひとりぼっち 子供のための小品 (1952) 「子供のためのアルバム」の1曲として作られた。完成度が高く、感動的な作品である。「ひとりぼっちの森の中」と訳してある楽譜もある。
バルビゾン Barbizon (1972) 「フルートとピアノのためのフォルラーヌ」を短く編集したもの。イ短調ではじまり変イ短調で終わる。
変ロ調のメヌエット ピアノ三重奏曲(1978)の第3楽章を編曲したもの。
ふざけっこ Singeries (1975) 低音と高音の対比が面白い。
子供らしさ (1975−81) 13曲から成る小品集。変化に富んでいて、演奏しても聴いていても楽しい曲集である。
ソナチネ第1番(1975〜78?) 第2楽章は連弾作品「おどけた組曲」の第1曲の編曲。
ソナチネ第2番(1975〜78?) 第1,2楽章は「おどけた組曲」の「跳躍」「舟歌」の編曲。少ない音で原曲のニュアンスを見事に表現。
ソナチネ第3番(1975〜78?) 第1,3楽章は「おどけた組曲」の「悲しげに」「優雅に」の編曲。
インテルメッツォ (不詳)
スカルラッティ風ソナタ パロディ作品として洒落た味わいを持つ1曲。

連弾・2台ピアノ作品(“*”は連弾作品、他は2台作品)

初めてのお手柄(1910)* 初心者向けの連弾曲集。
野外の遊び (1917) タイユフェールのピアノ音楽の代表作の一つ。第1曲 「ティルリタンテーヌ」はどのような遊びかよく分かっていないが、CD「DUO-PIANO FAVORITES」(Piano: Jeannine Morrison/ Joanne Rogers, aca CM20057)のBruce Gburによる解説によれば《Tug-of-War》と書いてある。「綱引き」ということのようだ。第2曲「カシュ・カシュ・ミトゥラ」は「かくれんぼ」であるとする説が有力である。(現在調査中)
ファンダンゴ(1920)
2つのワルツ(1928) 第1曲はゆっくりしたテンポの簡潔に書かれたワルツで、平行5度や不協和音を用いていながら不思議な美しさを醸し出す。第2曲は対照的に速いテンポのワルツで、爽やかな中にも、どことなくメランコリックな色彩が感じられる美しい作品である。
トッカータ(1957)
ソナタ(1974)
おどけた組曲(1979)* 「悲しげに Dolente/優雅に Pimpante/メランコリックに Mélancolique/舟歌 Barcarolle/溌溂と Fringante/跳躍 Bondissante」の6曲。


参考文献
Shapiro, Robert., GERMAINE TAILLFERRE A Bio-Bibliography, Greenwood Press, London, 1994
Tailleferre, Germaine/ Robert, Frederic., MÉMOIRES Á L'EMPORTE-PIÈCE (邦訳: 小林緑訳 『ちょっと辛口 タイユフェール回顧録』 春秋社,2002 )』


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